トンネルを抜けると
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」あまりにも有名な小説「雪国」の冒頭
私は飛行機の窓席にいる時、この文章をふと思い出す
飛行機に乗ったある日、その日の空は厚い雲で覆われていた
滑走路を飛び立った飛行機は、眼下の街並を徐々に小さくし雲の中へと入って行く
窓の景色は雲のみに支配され真っ白になり私は座席シートにあった雑誌に目を向けた
パラパラとページをめくり、座席に雑誌を戻そうとすると窓から柔らかな光が差し込んで来た
すると次の瞬間、窓には澄み渡る青空と一面に広がる純白の雲海
雲という長いトンネルを抜けた後に広がる別世界
突然訪れたその感動は、東京から乗車した新幹線で大清水トンネルを抜けた時にやって来る、真っ白な雪景色に出会った時の感動と重なった
今度は、新幹線に乗車している時、この美しい空の景色を思い出すのかもしれない